事例一覧神奈川県住宅供給公社
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職員の防災意識の育てかた
─神奈川県住宅供給公社の一斉訓練への取り組み─

神奈川県住宅供給公社は、神奈川県や川崎市、横浜市から出資を受けた、神奈川県の住宅政策の一翼を担う社会的企業です。1950年の設立以降、約8万戸の住まいを提供してきました。現在は、神奈川県内約13200戸の一般賃貸住宅やサービス付き高齢者向け賃貸住宅の管理、介護付有料老人ホームの運営をしています。住まいとサービスを通じ、安全・安心な住環境・豊かな暮らしを届けています。

以前は東日本電信電話株式会社(NTT東日本)の『Bizひかりクラウド 安否確認サービス』を利用していましたが、サービスの終了に伴い、『安否確認サービス2』に移行することになりました。

導入後は、9月1日(防災の日)に行われる「一斉訓練」に毎年参加しています。訓練を重ねるごとに結果が良くなり、2021年9月1日の「一斉訓練」では、職員の安否確認メールへの回答の最頻時間は1分と優れた結果を出しました。今回は『安否確認サービス2』を導入した経緯と活用の工夫について、総務部 総務広報課 青柳哉汰氏、鈴木伸一朗氏、奥村真代氏にお話を伺いました。

左から総務部 総務広報課 青柳哉汰氏、鈴木伸一朗氏、奥村真代氏

以前利用していた安否確認システムの切り替え時に『安否確認サービス2』を勧められた

安否確認システムを導入する前は、災害時にメールと電話で連絡を取っていたそうです。全ての作業が手作業だったため、東日本大震災では一部の職員の安否確認が行えなかったり、時間がかかったりしていました。

「東日本大震災の時、私は本社から30km離れた自宅にいたのですが、大きな揺れに驚いたものの、物が倒れるなどの被害はありませんでした。その後、電話が通じない状況が続き、2時間ほど経ってようやく課長と連絡が取れ、会社内は棚が倒れ資料が散乱しているという状況を知りました」(鈴木氏)

この大震災の経験もあり安否確認システムの導入を検討し、2014年にはNTT東日本が提供している『Bizひかりクラウド 安否確認サービス』を導入しました。

2018年8月31日に『Bizひかりクラウド 安否確認サービス』が提供終了することになり、切り替え先として紹介されたのがトヨクモの『安否確認サービス2』でした。自動一斉送信や自動集計機能など、災害時の安否確認を自動化できる機能が備わっていて、さらに安価ということもあり、導入を決断したそうです。

年3回の独自訓練により社内に安否確認の習慣を浸透させた

2018年に『安否確認サービス2』を導入してから、毎年「一斉訓練」に参加しています。9月1日(防災の日)に実施しているため、職員の防災意識を高めるためにも有効だと考えられたそうです。

結果は良好で、安否確認の回答時間の最頻値が2018年には3分で、2021年はなんと1分でした。回答率も98.4%という良い結果です。安否確認にすぐ回答するという習慣が社内に根付いていることがわかります。

青柳氏はその理由を「1週間前には、9月1日(防災の日)に安否確認訓練があると社内周知していますから」と事前周知していることをまず挙げていただきましたが、ほかの企業の実績を見ても明らかに結果が異なります。「一斉訓練」は実施時刻が非公開のため職員に事前周知していたとしても、良い結果を出せない企業もあります。

導入後、トヨクモの一斉訓練に毎年参加しています。
一斉訓練はとても良好な結果でした。

さらに取材を進めていくと「一斉訓練」とは別に 年度末/夏季休業前/12月 の3回、自社で『安否確認サービス2』を使用した独自の緊急連絡訓練を実施されていることがわかりました。この独自の訓練が一斉訓練の良好な成績に結びついたようです。

「一般職員と管理職につく職員では、訓練の内容が違います。一般職員の場合、安否確認メールに回答するだけですが、管理職につく職員は回答と集計結果を踏まえて総務部に報告をするルールになっています。回答がない職員には管理職から、回答するよう催促します。このように安否確認から情報収集までの流れを徹底して訓練しているため、安否確認メールが届いたら迅速に回答するという意識が社内全体に根付いているのだと感じています」(青柳氏)

直近では、2022年4月に防災訓練を実施して、当日19時半までに休職者を除く全職員からの安否確認の回答が得られ、回答率は100%だったそうです。

独自で行っている防災訓練でも、スマートフォンから簡単に登録ができます。

「新入職員も含め、問題なく全職員から安否確認の回答がありました。改めて、社内全体に防災意識が根付いていると強く感じています」(奥村氏)

仮に問題が起こっても迅速に改善するようにしているそうです。例えば、2021年10月7日に発生した千葉県北西部地震では、神奈川県でも最大震度5弱を観測しました。『安否確認サービス2』から自動で安否確認のメールが配信されたのですが、回答状況の一覧に一部名前がない従業員がいるとの情報が複数の管理職から入ったのです。

「その時まで気づかなかったのですが、所属地域を神奈川県西部だけに設定している人がいたのです。どこの地震の発報を受けるかという設定をユーザー自身で行っていたのですが、自宅の地域のみを登録して、本社がある神奈川県東部を登録していなかった人がいました」(奥村氏)

千葉県北西部地震では神奈川県東部が震度5弱、西部が震度4だったため、安否確認メールを受け取っていない職員がいたそうです。

「この一件で、気が付かなかった点も見え改善することができました。現在は、全職員が所属地域を神奈川県全域に設定しています」(奥村氏)

緊急参集の仕組みにも活用する予定

神奈川県住宅供給公社は、多くの賃貸住宅や高齢者向け住宅を運営しているため、災害発生時に情報の収集・整理や住宅の安全を確認する業務が発生します。そのため、勤務時間外であっても地震などの災害が発生した場合、職場に緊急参集するルールがあるそうです。

「緊急参集の制度は公社の住宅にお住まいの皆さまに安心・安全な暮らしを提供するためのものです。震度や警報発令を基準にしていますが、同じ震度の地震であっても、被害の状況によって対応方法が変わります。そのため、適宜職員に対して指示出しをすることになっています」(鈴木氏)

問題になるのが指示伝達の方法です。万が一のためとはいえ、職員全員の連絡先を共有するというのもハードルが高いため、現在は各部署単位でしか個人のメールアドレスを把握しておりませんが、今後は『安否確認サービス2』を緊急参集時の指示伝達にも使おうとマニュアルの作成を進めているそうです。『安否確認サービス2』を利用すれば、個人のメールアドレスを確認、管理する手間はかかりません。

さらに今後は、地震以外の災害時でも『安否確認サービス2』を利用することを検討しているようです。『安否確認サービス2』は地震に加えて、津波や特別警報にも対応しています。神奈川県住宅供給公社の住宅は神奈川県のほぼ全域にあり、海・川や斜面地の近くにもあります。地震以外に想定される災害に対応するための運用を検討することが大切です。

最後に今後の展望について伺いました。

「地震以外の災害時でも安否確認を行い、緊急参集の仕組みを構築したいと考えています。訓練に関しては、PCではなく、自身の携帯端末で回答するように徹底しようと考えています。会社ではPCでもいいですが、出張中や勤務時間外に災害が発生した時でも迅速に回答できるようにするためです。より実践的な訓練を行っていこうと思います」と青柳氏は語ってくれました。

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